お蔵は元気いっぱいの江戸娘で、近所の子どもたちと折り紙遊びをするのが大好きだった。
ある日、お蔵の働く水茶屋「おせん」に六人の娘たちがやって来た。
箱入り娘のようで、他人への気配りのない所作を繰り返していた。堪忍袋の緒が切れたお藏は、
娘たちに灸をすえようと、弟太郎たちと示し合わせてひと芝居打った。
万事うまく運んで大満足だったが、娘たちから投げ掛けられたさげすみの言葉はお蔵にとってつらいものだった。
お蔵は、実は、呂宋(ルソン)生まれで、幼い頃、弟太郎とともに人さらい船から逃れてきたところを、江戸平川町で茶店を営むお染と五助の夫婦に助けられ、二人の子どもとして育てられるとともにお染と五助が営む水茶屋「おせん」を盛り立てていた。
だから、幼い頃のつらい思い出と娘たちからのさげすみの言葉とが入り混じって、お蔵は、江戸が本当に自分の居場所なのか、そう思い悩むようになっていた。
それでも、お蔵は、それから起きた四ツ谷御門外での事件に端を発した鬼騒動、水茶屋「おせん」で仲居をしていたお常の長屋でのごみ屋敷騒動、さらには、耳元に時折ささやいてくる不思議な声音から、生きていく上での大切な理を気付かされた。
こうして、お蔵は、江戸が自分の居場所なのであって、ここで江戸娘として生きていく、そう誓いながら、元気よく立ち上がっていた。
以上。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-12-31 10:17:56
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