「笑って死ぬなんて、馬鹿なのかな──?」
生に意味などなく、死に価値などなく、生者は無慈悲に切り捨てられ、死者は無残に打ち捨てられる。当然彼らに墓など存在せず、ただ転がるだけの骸に、墓を造る『墓守』がいた。とある大穴の底の、死体が無残に打
ち捨てられる『ゴミ捨て場』で墓を造り、それを守る墓守は、満足げに笑って『死ぬ』死者に遭遇し、ひどく困惑する。
無念ではないのか。悔しくはないのか。
多くが生に縋りついて死ぬことを拒むのに、どうして笑って『死ねた』のか――?
幸せな少女がいた。誰よりも幸福を享受していた。
この『ゴミ捨て場』には、様々な者が落ちてくる。既に虫の息の生者、怪我の少ない無事な死体、ひどく損壊した死体、そして、死んでるはずなのに『生きている』死者。そんな彼らを屠り、看取り、埋めてやるのが墓守の役目だ。無人の『ゴミ捨て場』で、誰もそこに棄てられる死体の存在など知らず、ましてや、墓があることや墓守がいることを知っている者は誰一人いない。そんな中で、墓守は誰に課せられるでもなく、墓を造り続けていた。
少女は何を奪われても幸せを想い続けた。
「わたしの名前は、サクラっていうの!よろしくねっ!」
そんなある日、死体の代わりにサクラという一人の少女が落ちてきた。弱っていた彼女を介抱し、ともに暮らす中で墓守の中の何かが変わっていく。
生活を共にし、時に彼女の睡眠を見守り、時に大人げなく一緒に遊び、そして時に──。
だから少女は、笑っていられた。
彼女たちの出会いは偶然だったのか、必然だったのか。腐敗に塗れたその場所で至る結末は、果たして無念で終わるのか、それとも満たされて終わるのか。
答えなんて最初から決まっている。最後がどうなろうと、笑って終わりを迎えるのだ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-03-31 18:00:00
116405文字
会話率:26%
北の国ホワイトベルを舞台にした童話チックなお話です。
まだ僅かに魔法の力が残るこの国で100年間続く『冬物語』は国民誰もが知っている有名な演劇。
叔母の経営する宿屋で生活を送る姉妹の姉、リリックは天性の才能に恵まれ、かつて国立劇場の舞台に立
つ程の実力者でした―――両親が亡くなるまでは。
忙しい日々の中、ある晩リリックは不思議な夢を見ます。
それは『冬物語』の主人公が語り掛けてくる不思議な夢。
次第に自分の中で眠っていた気持ちが再び目覚めるのをリリックは感じます。
そして妹のミンクにも、姉との確執を境にある変化が訪れるのでした。
やがて姉妹は決別の危機を迎えます。その裏には『冬物語』に秘められた悲しい過去があったのでした。
完結編となります。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-12-27 18:54:58
5113文字
会話率:46%
北の国ホワイトベルを舞台にした童話チックなお話です。
まだ僅かに魔法の力が残るこの国で100年間続く『冬物語』は国民誰もが知っている有名な演劇。
叔母の経営する宿屋で生活を送る姉妹の姉、リリックは天性の才能に恵まれ、かつて国立劇場の舞台に立
つ程の実力者でした―――両親が亡くなるまでは。
忙しい日々の中、ある晩リリックは不思議な夢を見ます。
それは『冬物語』の主人公が語り掛けてくる不思議な夢。
次第に自分の中で眠っていた気持ちが再び目覚めるのをリリックは感じます。
そして妹のミンクにも、姉との確執を境にある変化が訪れるのでした。
やがて姉妹は決別の危機を迎えます。その裏には『冬物語』に秘められた悲しい過去があったのでした。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-12-27 18:45:28
6689文字
会話率:51%