天の意志を受けし地、璋陽国。
その北辺にある霧野郷で、ひとりの『麒麟』が目覚めた。
黎麟(れいりん)――神獣の血を引く両性具有の少年は、家族と静かに暮らしていた。だがある日、天意を恐れた王により、村は焼かれ、家族は殺され、すべてが炎に消えた
。
『仁』の象徴とされた麒麟が、怒りと悲しみをその身に宿すとき、天命は静かに狂い始める。
特殊急襲部隊に所属していた前世を思い出した黎麟は、全てを奪った王に復讐を誓う。命令ではなく、自らの意思で。
そんな黎麟が出会ったのは、国を捨て、名を捨てた義賊の男――蒼嶂(そうしょう)。
神獣と義賊。聖なる存在と、蔑まれた叛徒。
共に旅する彼らは、諸侯の思惑、王の陰謀、そして『天命』と呼ばれる絶対に挑んでいく。
これは、『仁獣』にはできない、ただの『人間』にしかできない、選択の物語。
壮麗なる東方異世界戦記×復讐の英雄譚、ここに開幕。
◆主要人物
黎麟(れいりん)
主人公。麒麟。両性。黒の髪と瞳。中性的で、凛とした雰囲気を纏う。麒麟形態は黒馬に似た姿で、額に小さな角。細身ながら芯の強い佇まい。内に怒りと慈愛を抱く。純粋で真っすぐ。冷静に見えて激情家。初めての旅ではよく道に迷う。
嶂(しょう)【本名:蒼嶂】
義賊団『暁牙団(ぎょうがだん)』の頭領。白銀混じりの黒髪。鋭い目元、やや狼系の獣人風。普段は粗衣を纏うが、元は王族の衣を着ていた。無頼漢で皮肉屋。実は誠実で義に厚い。口は悪いが、徐々に主人公と心を通じ合わせていく。女に滅法弱い(醜女にも優しい)
◇『暁牙団(ぎょうがだん)』構成員
副頭領:風間(ふうけん)
獣人(風の狐)で、俊敏さと口八丁で団をまとめる。情報通。細身で狐顔。軽薄に見えるが、人を見る目に長けている。蒼嶂に忠誠を誓っている。
医術係:宵蘭(しょうらん)
薬草師の娘。かつて王に家族を殺された。穏やかな美人だが、毒にも精通しており、毒医と呼ばれる。
突撃隊長:鐡鬼(てっき)
牛獣人。無口で巨体、斧使い。蒼嶂に命を救われて従う。
◇現王:煬震王(ようしんおう)
◇他四大諸侯折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-01 21:31:33
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会話率:21%