極々平穏な日常を送る宿屋"風月庵"の看板娘ラミ。
彼女は幼い頃に聞いた吟遊詩人の話に魅せられ、二十歳になった今でも、未だ明かされていない秘宝や秘境に深い興味を持っていた。
"自分もいつか、冒険家
になりたい"
そんな夢を抱きながらも、何不自由ない"今(いま)"を過ごすラミ。不自由が無い事が不自由だ!と強く想いながら、今の生活に変化が訪れないまま平凡普通な暮らしを送り続け、いつしか夢を諦めようとしていた。
「はぁ〜………今日も退屈で素敵な一日ね〜」
いつもと変わらない日々の中、風月庵で店番をしていたラミが、窓から射し込む夕日を眺めながら呟く。すると、二ヶ月前からこの宿屋で宿泊していた青年と、変なイントネーションの声で話す妖精が騒がしく帰って来た。
「ラミちゃ〜ん!良かったらデートしませんか〜っ!」
「何、セクハラかましとんねんっ!このボケナスッ!!」
ドゴンッ!!
「ぎゃあぁぁっ!?」
「オラオラ〜ッ!いても〜たるで〜っ!」
「か、勘弁して〜っ!?」
「え〜っと……これ、あらすじの説明です。二人共、真面目にやりましょうよ」
「せやかてな〜、ローがアホ過ぎんねん」
「ちょっとのナンパ、いいじゃんか〜っ!」
「ええ訳あるかっ!」
「あ、あらすじが進まない……」
取り敢えず、軟派な青年ローフェンと、相棒の妖精プリセラは"探し物"があって世界を旅をしている。
ラミの両親が営む宿屋に訪れた二人。プリセラは日々、ローフェンを粛清する為にハンマーで張り倒していた。
冒険家である二人は風月庵を旅の拠点にし、旅から帰る度に旅先の土産話をラミに話していた。
そして、その土産話が彼女の"冒険家になりたい"と言う幼い頃の夢を再び呼び起こさせる事になる。
見た事も聞いた事も無い世界や出来事に、いつしか心を動かされる。ラミは生まれ育った街で、平穏な日常と幸せが約束された"今(いま)"を捨て、冒険家になる決心をする。
この物語は、平穏な日常を捨てて死と隣合わせの世界に身を委ねようとする、宿屋の娘ラミの旅立ちの物語である。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-07-28 18:45:26
15667文字
会話率:40%