2040年日本。
世界的に見て、近年の人工知能の研究は停滞しており、一時的にAI分野から離れる研究者が続出した。
AI後進国の日本はこれをチャンスと捉え、少ない予算で地道に研究を続けた。しかし、日本のAI研究は行き詰っていた。そこで脳分野か
ら離れ、研究の焦点を内臓器官に移した。
研究成果として、人工知能に人工の内臓器官などを含めた人工の身体を与えることに成功した。しかし、人間を完全に模倣したように見えても表層的なモノに過ぎなかった。最大の課題は、人間のように喜怒哀楽が現れないということだった。
その課題に挑んだのが、日本工科大学の二人の天才、藤崎斗真と間宮伸介だった。
数十年前に「脳腸相関」が研究で示唆されていたことから、彼らはこれに焦点を当てた。
知能や人格、感情は「脳」だけでなく、「腸」とも密接に関わっているということを発表したのだ。
その中でも、2人が注目したのは「マイクロバイオーム」=(腸内細菌)だった。
腸内細菌の変化が人々の感情の起伏に影響しているという過去の研究から、人工知能に腸内細菌を与え、パラメータを調整するようにした結果——!!
うまくいっていたかに見えていたのもつかの間、斗真の最愛の恋人白石百合の死と、人工生命体が倫理的な問題を抱えたことで政府からの資金援助が途絶え、次第に歯車が狂いだす。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-06-22 23:50:58
32691文字
会話率:31%
21世紀後半。日本は、持続可能な老人福祉社会の実現のために、腸内細菌叢をはじめとする、体内の微生物を調整する法案を通した。この法案は、『ウンコ法』の呼び名で知られる。安い高齢者介護施設に入るには、誰もがウンコ法に同意する必要があった。
「わたし」は、老父を介護施設に入れる時にウンコ法に同意したことで、負い目を感じていた。そして、自らも老いてウンコ法に同意し、介護施設に入ることになる。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-01-04 12:00:00
5973文字
会話率:58%
この物語はフィクションです。でも、近い将来においては…
ヒトの遺伝子の数は二万数千個と言われている。しかし、「ヒトが生きている」というとき、そのヒトは四〇〇万個の遺伝子を抱えている。
ヒトの細胞の数は六〇兆個。しかし、生きているヒトが持つ細
胞は一〇〇兆個である。
ヒトは、細菌とともに生きている。
今まで人間は、細菌を軽視してきた。
軽視が言い過ぎなら過小評価してきた。
細菌の重要性は、今の時点でもかなり研究されているが、しかし、それは充分というには遠い。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-12-22 21:22:44
124303文字
会話率:30%