「これは祖母から受け取ったものなんです」
落ち着いた雰囲気の美しい女性が我が社へと持ってきたのは、かの有名な『精霊王』の書いたとされる手記だった。
精霊王といえばこの大陸に覇を唱えた偉大なる王にして、当時『邪教』とされていた精霊信仰を三
大信仰の一つにまでした大神官だ。
もしも手ずから書いた手記であれば、それはかなり貴重な歴史的資料になる……
私は興奮しつつ、女性からもらった手記のページをめくった。
かなり古いものだったけれど、保存状態もよく、革の装丁は指に吸い付くようだった。
そうして、私は衝撃を受けることになる。
その内容は、かの偉大なる精霊王のことを記したとは思えないものだったのだ。
私はこの手記につけるタイトルを必死に考えた。
『偉大なる精霊王の真実』? あるいは『精霊王公記』? いや、これは、そのような立派なものではなく……
クズとヤンデレの、建国記。
そんな仮称が浮かんでしまうような、なんともひどい、『精霊王の真実』なのだった。
投稿先:小説家になろう、カクヨム折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-05-30 11:00:00
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