俺は雨が嫌いだ。
視界も怪しい大雨の日に、俺は全てを失った。
両親を、人としての尊厳を。
たかだか、五歳という幼い時分に失ってしまったのだ。
だから俺は、雨の日が嫌いだ。大嫌いだ。
――――だけど、ある日の大雨の中、俺はアイツと出
会った。
全てを失ったあの日と同じような境遇で、仮初ながら平穏というものを取り戻す機会を得た。アイツと出会えなければ、俺は今でもあの薄暗い裏の世界で生き続け、誰にも知られないまま人知れずに死んでいただろう。
…………だが所詮、仮初はただの仮初なのだ。
どこまで行っても、人殺しはどう塗りつぶしたところで人殺しなのだと、改めて思い知る羽目になる。奇しくも、また雨の日に。
嫌いだ。
だから雨の日は大嫌いなんだ。
……ボクは晴れの日が嫌いだ。
晴れている日は人が死んでいくのを隠せないから、ボクは澄み渡った世界が必然と嫌いになっていた。
ボクは生きているだけで他人に『死』を与えてしまう……分類(アンノ)不明(ウン)という人類の別の形として分類された人間らしい。
いらなかった。ボクはそんなものになりたくはなかったのに……。
能力なんて……力なんて欲しくなんかない。普通に生きたかった。
だけど、彼がボクを連れ出してくれた。
あの雨の日に……死のうとしていたボクを地の底から救い出してくれたのだ。
いつか終わるかもしれない日々だけれど、ボクは例えどんなことがあろうともこの思い出を忘れない。
彼が作ってくれた世界を、ボクは絶対に。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-07-04 22:19:47
4938文字
会話率:43%