人の死後について考えたことがあるだろうか。ただ漠然と自分の死後を思うのではなく、この上なく真面目に、死の先を考えたことがあるだろうか。そのために何かしらの行動を起こしたことはあるだろうか。この僕、名切はやてには、そのような言動を取ったことは
なかった。無論、子供ながらに考えたことはあるが、大人になるにつれそのような考えを持つことは無くなり、成人した今日に限っては死後の世界について書かれている宗教本やエッセイを見かけるとどうも胡散臭く思ってしまう。けれどもそれは、別段珍しいことではないだろう。誰だってそうなのだから。僕の人生というものは、この世界における有象無象だ。貴重な体験も、無価値な経験も、全てひっくるめてなお、「当たり前」であるといえるだろう。良くも悪くも、僕の日常というものは、今のままがあるべき姿なのだろうし、だからこそ「当たり前」が終わった後のことなんて考えるだけ無駄なのかもしれない。そう、僕は考えていた。あの日、爆裂トマトになって死んでしまうまでは。
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原因不明の事故で死んでしまった名切はやて。エロ雑誌入りのコンビニ袋を片手に、気が付けば、妙なオブジェが立ち並ぶ石造りの遺跡に立ち尽くしていて・・・・・。生前の当たり前が一切通用しない異世界。確固たる目的も意思もないが、とりあえず何か行動を起こそう。目下の目的はとりあえず状況を把握すること。ここは死後の世界なのか、それとも別のなにかなのか......ま、とりあえずこの雑誌を紳士的に活用してから考えよう。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-10-28 15:30:00
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