1910年(明治43年)夏。画家雪村長光(ゆきむらちょうこう)は、伊豆を素描旅行している内に、時代に取り残されたような小さな村に迷い込み、野宿することにした。その夜、水音に気付いた長光が行ってみると、女物の着物が木の枝にかけられ、水浴びをし
ている者がいる。月明かりに照らされた人影は女ではなく、少年だった。
「蛍草(ほたるぐさ)を摘むと雨になる」という村の迷信と、少年を巡る村人達の中で、少年に魅了された孤独な画家は、次第に蒼の迷宮へ取り込まれて行く。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-06-04 13:06:33
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