魔王戦争――。
そう呼ばれた戦いがあった。
大陸中を巻き込んで、人々を、生物を抹殺しようとした魔王。それに立ち向かった一人の勇者。魔王は勇者に討たれ、大陸にも平和が訪れるはずだった。
しかし、この魔王戦争の最中にあって人間たちは
互いに争いあっていた。裕福な国が小国を飲み込み、軍事力に勝る国も魔王が放った魔物たちに蹂躙された。戦いが終わるころにはすで半数の国が消滅していた。そんな状況の中、結束して魔王軍と戦いを繰り広げ、戦後、大陸に統一国家を樹立させる原動力となった組織があった。
『冒険者ギルド』
彼らは独自に活動し、国々の垣根を越えて戦いに参加した。それはあらゆる分野に及び、時には大きな軍事力として、時には民を守る要として、また魔王軍と戦うための知識の集積や研究は魔王戦争を戦っていくうえでとても貴重だった。
しかし。
戦後、大陸統一国家が樹立されると、『冒険者ギルド』の役割が一変する。多くの戦果を残した強者は戦争で力尽き、優れた学者や知識人は高額で国々に雇われ、多くの冒険者は戦争の傷跡から逃れるように故郷へ帰っていった。そして、統一国家による大陸中の遺跡の封鎖。急激に組織として衰退し始めた『冒険者ギルド』
これは、それでも『冒険者ギルド』に身を寄せ、一陣の風のように駆け抜けた者たちの物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-08-15 12:00:00
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