あらすじ:
気がついたら、異世界の片隅で目を覚ましていた。
過去の記憶はぼんやりと霧の中――でも、なぜか“おむすびの握り方”だけは、この手が覚えていた。
名前も分からぬ俺に、みんなは「虎さん」と呼ぶようになった。
白髪の無表情少女・
ルゥナの助けを借りて、小さな屋台を開いた。
看板には、たった一言。
> 『おむすび屋、虎さん。貴方の記憶を握ります。』
この街《ルーミア》には、記憶を失った人々が暮らしている。
そして、なぜか俺が握るおむすびを食べると、人は“忘れていた何か”を思い出すという。
梅干しで、母のやさしさを。
焼き鮭で、兄との別れを。
昆布で、恋人の笑顔を。
そして、塩むすびは――少女の「初めての味」となる。
これは、記憶をなくした者たちが心にぽっかり空いた“空白”を、
おむすび一つでそっと埋めていく、小さくてあたたかい物語。
あなたの記憶も、ぎゅっと握ります。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-04 22:30:00
20716文字
会話率:32%