原作 マルティン・ブーバー
邦訳 杉本隆騎
ミッドナイトノベルズのほうで『我と汝の物語』という小説を連載していますが、そこで部分的に翻訳引用しているマルティン・ブーバーの Ich und Du を、全文にわたって翻訳したものです。
近年
この日本では、愛し合う相手を得ることが難しいなどのことでお悩みの方が多いと思いますが、その悩みを解決するための書物の一つとして、このブーバーの著作を紹介させていただきたいと思います。
本文中に述べられている〈我-其〉における〈我〉とは、愛し合う相手を得るようになれない〈我〉です。それに対して〈我-汝〉における〈我〉とは、愛し合う相手を得るようになれる〈我〉です。その違いを理解することで、愛し合う相手を得ることが難しいなどの悩みをお持ちの方も、それが可能となる〈我〉になっていただけると私は考えております。
私も若いころは彼女のいない期間がかなり長かったのですが、その最中の20歳代前半に日本語訳の「我と汝」(岩波文庫)に出会って並々ならぬ感銘を覚えました。そして30歳代半ばにようやく生涯の伴侶となる女性に出会って結婚となった折に、以下のような詩を書き綴ったのでした。
我と汝の世界へ
人を好きになって
僕は世界を生きるようになった
それまでの僕はただ世界を認識し
分析するだけだった
その人は心の病に苦しんでいたから
愛することでその病を癒してあげようと
僕は決断の河を跳び越えた
素敵だから愛しようと思ったのではない
愛することで素敵にしようと思ったのだ
するとその人は見る見るうちに愛らしくなっていった
愛の不可能に苦しみ悶えていた時代よ
さようなら
気の遠くなるような孤独の時代よ
さようなら
僕にもようやく愛の幸せが訪れた
あの子はとても可愛くて
本当に抱きしめたいほど愛苦しくて
この子にすべてを賭けようと思った
そのとき以来ぼくの世界との関わりは
見ることから生きることへと変ったのだ
そしてこのたび、植田重雄訳の岩波文庫版や田口義弘訳のみすず書房版などを参照させていただきながら、自ら Ich und Du 〈原書には Lambert Schneider 社の Die Deutsche Bibliothek ISBN 3-7953-0914-X を用いました)の全文翻訳を試みることに致しました!
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-09-09 15:51:08
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