平凡な日常に潰されかけた青年が、歯車と蒸気が織りなす異世界で「英雄」として覚醒する――。
中村謙々は、多言語翻訳機の開発に情熱を燃やす若き機械工学者。
しかし現実は、ブラック企業の社畜として働く日々。母との会話もままならない孤
独な生活に、心はすり減っていた。
ある夜、祖父の形見のオルゴールを修理中、彼は一枚の「真鍮のチケット」を発見する。
刻まれた謎の文字《クロックワーク・カーニバルへようこそ》――。
次の瞬間、電車ごと異次元に飲み込まれた謙々が見たものは、歯車が空を舞い、機械仕掛けの生命体が闊歩する蒸気と魔法の世界だった。
「君の翻訳機は、この世界を滅ぼす」
謎の美女・カラクリアキコ(リングマスター)は告げる。
この世界では「言葉」が物理法則を支配し、誤訳が現実を歪めるという。謙々が開発中の翻訳機は、次元の壁を超える危険な鍵だった。
追いかける謎の追手。歯車に刻まれた滅亡の予言。
そしてアキコの左腕に埋め込まれた、赤く輝く《禁忌の歯車》――。
「君が英雄なんかじゃないのはわかってる。でも」
アキコが囁く吐息に、機械の蝶が舞う。
「壊れた時計を直せるのは、壊れた歯車だけだ」
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-03-23 13:28:21
3588文字
会話率:45%