今、一頭の馬が競馬場へと現れた。名はプリマヴェーラ。三冠馬ジャストアヒーローを父に持つサラブレットだ。その記念すべきデビュー戦で彼女の人気は、十六頭中十五番人気。貧相な馬体に、小さな体。追切タイムも平凡。馬主も調教師もリーディングで下位の
方に位置している。この馬に金をBETするなんて、どぶに捨てるようなものだと誰もが思っていた。競馬場にいる人々は、当時、彼女になんら期待もしていなかった。
人と言うのは、大昔から今まで、強い馬が現れると熱狂する。その馬を一目見ようとありとあらゆる交通手段を用いて、寿司詰めになった競馬場へと押しかける。連日のようにテレビや新聞を賑わせ、強い馬同士の戦いは大統領や総理大臣も注目した。
プリマヴェーラはそんな馬の中でも、特に人を騒がせた馬として記憶されている。
彼女を語る時、誰しもが混沌か喧騒を併せていた。
これはその物語である。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-07-19 04:57:49
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会話率:25%