『現実から逃げるな』
『目を逸らしてるんじゃない』
『これが現実だ。わたしたちはまだ生きている』
『世界も――まだ生きている』
高杉綾子は死んだ。
謎の怪物が横浜を跋扈し、世界の風景は一変した。これが本物の世界だと見せつけながら、破
壊と殺戮がまき散らされる。
残された者達に託されたのは、世界の未来を変える選択肢。
だから、シンプルに思う。
「上には上がいる」という真理は、それはそれで正しいのだとしても。
そういうこととは別の問題として、力ある者には――自由と責任が、つきものなのだ。
世界を偽物だと看破した賢者は、その賢さが故に、かえって小さな本物を見落とす。
これは、そういう話だ。
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(以下、第2章あらすじ)
――だから、わたしは知らない。
爆破されたビルも、雨の中の銃声も、魔法のような魔法も、わたしとは関係のないところで起こったこと。
そんなわけで、谷津田久則は死んだ。
さて、ここで質問。
では、この俺は。
谷津田久則の記憶と、谷津田久則の姿形を持ち、谷津田久則のココロを引きずっているこの俺は、いったいなんなんだ?――
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(以下、第1章あらすじ)
十九歳になったばかりのある日、高杉綾子は死んだ。
完璧な不意打ちだった。
どのくらい完璧かって、なにしろ殺された彼女自身が相手の顔を確認することもできなかったのだ。
うしろから重加速した精霊刀で左胸を一刺しし、そのまま肩のほうに強引に引っ張って抜き去り、返す刀で胴をまっぷたつ。
まさに一瞬。振り向く隙すら与えない、完璧な暗殺術だった。
そういうわけで、高杉綾子は死んだ。
さて、ここで問題がひとつ。
じゃあ、このわたしは。
高杉綾子の記憶と、高杉綾子の姿形を持ち、高杉綾子のココロを引きずっているこのわたしは、いったいなんなんだろうね?――
(『銀砂の港の策士たち』と同じ世界観ですが、独立して読むことができます)
(『中林さんの天球儀』とも世界観は同じですが、こちらは場所が遠いので完全に独立してます)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-09-15 19:00:00
373372文字
会話率:52%
東京圏大手のタクシー会社、首都交通向島営業所所属のタクシードライバー三津。彼は配属から数年の若手だが、既に得意様を何件も抱える優良運転者である。相棒の8101号車と共に今日も東京の何処かを走り回っている。
※この小説は元タクシードライバー
の作者の手元に残っている営業日報を元に脚色・再構成したものです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-05-18 23:44:02
8861文字
会話率:61%