「おっと……」
おれは座った席が思っていたより低かったことに驚き、つい声を漏らしてしまった。
誰にも聞かれなかっただろうな、と辺りを見回すと右に二つ席を空けて座っていた男と目が合った。初老の男だ。にっこり笑い、軽く会釈したので、おれも
同じように返した。
スクリーンのほうへ向き直す前に、もう一度だけ席上部に付けられているプレートの番号と、渡された券の番号を見比べてみる。
「D-A-175……」
合っていたので、ようやく人心地ついた。
「隣、いいですか?」
「えっ、あ、はい」
先ほどの男が身を屈め、声を潜めて話しかけてきた。男はおれの返事に安心したようで、柴犬のように目を細めて笑い、よっこいしょと呟いておれの隣の席に座った。
勝手に席の移動などして誰かに、特に管理者に咎められやしないかと、おれはまた周囲を見回した。しかし、見張りの姿はなく他の人間はぽつりぽつりと静かに席に座っていて、寝ている者もいれば、腕を組みスクリーンを見ている者。いずれも特にこちらに気を払ってはいないようだった。折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2024-05-06 11:00:00
2700文字
会話率:54%
学校生活を送る上で、隣に誰が座るのかはかなり重要だ。五年生のトモキは、クラスで一番美少女の隣を狙っていたのだが、無情にも夢は潰える。新しくお隣さんになったのは、成績は優秀だが「関取」と呼ばれるシノブだった。テンション下がりまくるトモキだった
が、彼の心中などお構いなしに学校生活は進んでいく。トモキの淡い恋心は、果たして叶うだろうか。
本作品は、黒森 冬炎氏主催の「移動企画」参加作品です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-11-05 20:00:54
17766文字
会話率:32%