-ひろ葉- 小説家になろう 更新情報検索 - 新着順 -

真夏の空の下に、男の子が見える。何年経っても見える。どんなに世界が変わっても見える。だから、ぼくは、ぼくでいられる。

記憶をたどって、手繰り寄せて、あの麦藁帽子のひさしの下に見えていた、あぜ道の景色を書き出そうとしてみた。一つ寄せれば、一つ見えた気がした。どの場面も、臆病なことだった。

思い出の中には、必ず、麦藁帽子が出てくる。それも、子供の頭には大きい麦藁帽子。あの日、ぼくは、あぜ道をどこまでも歩いていった。大人になって、その道を歩いてみたら、こんなに近くだったのかと、自分が巨人になったような気になったけれど、あの麦藁帽子だけは、大きな感触のまま、頭に残っていた。

連休の間に雨が降りつくし、真夏になったなら、感染症のことはあるにしても、田舎に帰ろうかと思った。今は、従兄弟がいるだけだが、それでも。とりあえず、葉書を送っておいた。

三時間の睡眠なんて、今なら当たり前のようにあるだろう。子供の頃、それがとてつもないことに聞こえたのは、自分が子供だったのと、夜が夜のままだったからかもしれない。

今日も暑かった。連休は雨らしい。この雨で梅雨が明けるのか。そして、感染症に悩むお盆が来る。あの頃のお盆ではないけれど、日本はそれでも、時を経てゆく。

雷が鳴っていた。夢だったのか。今朝はいい天気だけれど、寝床で雷の音を聞いていた気がする。子供の頃、山間の家、夏、雷がよく鳴っていた。祖母のひょうひょうとした姿が不思議だった。蚊帳に入ってもしょうがないのに。

うなぎは、やっぱり美味い。子供の頃に、川でとったうなぎを、田舎のおじちゃんがよく焼いてくれた。白焼きだった。タレを絡ませたうなぎが、蒲焼きだと知り、それが美味いと知ったのは、ずいぶん大きくなってからだった。子供のほくは、白焼きと佃煮でご飯を食べていたんだ。

思い出すことと、何となく、つながっているものがある。何故かと聞かれたら、答えられることの一つ。

古い思い出の中に、たくさんある祖母のこと。リュウマチで曲がった手が痛々しかった。痛々しかったけれど、それが今でも、思い出を鮮明にしている。今でもあの古い飴はあるんだろうか。近頃は見た気がしない。

少し、思い出話にしようと思った。気候のせいか、体調も優れず、考えも偏ってゆくから。楽しいこと、悲しいこと、なんにしても、少し、思い出話にしようと思った。スーパーで南京豆を見て、そう思った。

暑さで頭がおかしくなったのか、自分が狂うのか、誰の気配を、感じているのだろう。見えたらいいのに。

さほど優れてもいないのに、輝けるのは、とりあえず、動いたからだ。引っ込み思案というのは、損だから。あんな風にやり始めれば、いい。それをお父さんの頃は、青春と言った。

ゆらゆらと、風にそよぐ薄を見ていた。坂の途中、汗をぬぐいながら。薄のように、暑くても、ゆらゆらと、どこ吹く風になりたい。癒せるなら、それがいい。なれないものか。

昨日の空と、自分でいられたところを思ってみた。夏の空の、激しい光を受けても、なるべくなら、なるべくなら、あまり、変わらないでほしい。そっとしておきたいと。

いったいどう生きれば、何を生きればよいのか。わからないままに、時は過ぎてゆく。その合間に、昔より、人が、市民が守られるようになっているだろう。だから、勘違いしてしまうこともある。それはそれで、気をつけて。

恵まれてきた。なに不自由のない暮らしだった。みんな、ありがとう。仕事に行けるのつて、幸せだと思うよ。

豪雨のあとの暮らし方、癒やし方、そんな本があったら、捲っているかもしれない。思いがけず涼しい。だけど、気持ちが熱っぽい。頑張るなんて、してこなかった。そのほんとが、こんなときにまた噴き出す。夏の思い出、その光に照らされて。

あれもこれもと、気をつけることご多くて、空を見ることも減っている。いつのまにか、大雨を連れてきては、湿気た人の生き方に小言を言っている。

激しい雨の夜、帰りが遅くなるのは、あれこれと考え、また、何にも浮かばない。疲れたからといって、何がどうなるものでもなく。早く、何かと落ちついてほしい。

帰り道、疲れた頭や体に染み込む物語。その中の、いつの間にか記憶になる場面。自分のことと重なる言葉、音、男、女…… 何にもわかっていないのは、どっちなんだろう、あの人たちにしても、ぼくにしても。

雨の合間に娘と会って、ぼくは、パフェを食べた。彼女は、ドリンクバーでオレンジジュースを注ぎ、戻って来ると、ぼくのパフェから、オレンジを抜き取った。フルーツはたいてい、彼女のものだ。

夜になると熱が出る、何故かわからない。気持ちの加減かなと、胸に手を当てる。平和なときほど、何かに侵されているような感覚がある。平和は平和で、それでいいのかもしれない。なのに。 ほんとの気持ちを乗せた言葉は、そんなに、ふかふかでも、すべすべでもない気がした。

雨が降るので、雨のことは書くけれど、夜中であることは、置いたままだった。夜中にウロウロすることも、残しておこうと思った。

原風景について考えることが多くなった。喜びや悲しみを得られた心の源は、どこにあるのか。これがあったから、自分でいられたと、そう言えるものは、長く生きるうえでは必要に思う。そこにはまた、開いてはいけない、タブーも絡まってはいるけれど。

誰もがいつか死にゆく者だとして、これほど、自分のことだと、言い切れるものはない。人生の大半を他人事のように生きてきて、昨日からの落ち着かない思考が、こんなところに来るなんて。

豪雨によって、亡くなられた人々のことを考える。昨日まで、心配はしていたのかもしれない。それでも、現実になるとは、考えきれなかった。暮らしがあるからか。何があるからか。ぼくは、どうだろう。気がつけば、また月曜日だ。

とりとめの無い語り口になった。読む人のことは考えなかった。曇り空、雨の合間の空を見ながら、昔と、少し昔と、今がからまった。わかる人にはわかると思う。

そこそこの雨に踏み出すのは、誰だってためらう。ためらうだけじゃなくて、何かが滲み出てくるようなら、それは何だ。世界が傷ついているのかい。

どうでもいいようなことを、いつの間にか気にしているときがある。自分の神経の問題は、何をきっかけに、出てくるのだろう。曇り空の熱は、その一つ。

好きなのに、苦手なところがあること、ありませんか。ほくはわりとある。これさえなければと、よく思っていた。それがだんだんと、それもあっての、トマトかな、と思うようになった。

簡単な声と言葉。いつでも持っていられたら、人生は楽しくなる、そんな気がする。難しいことは、わかりにくいから、なるべく、なるべく、簡単な声と言葉で、久しぶりって。

島国なんだから、残せるんじゃないか、何をか、何かを。それが、感動というか、感激というか、何回も出くわしても、これは良いって、そんな感覚になれること。会話を控えることもなく、駅前は騒がしいから、余計にそう思う。

Kと話しているの、ときどき、どう言ってよいのか、わからなくなる。なんにしても、あれこれ、気にしすぎるようで、困ったものだと思っている。自分はどうだろうか。もしかしたら、自分でわかっていないだけで、同じなんじゃないだろうか。さっきの、夕立よような雨にはかからなかったけれど。

住んでいるところには、時々霧が出て、何も見えなくなることがあって、そんな朝に、ウグイスが鳴いて、とてもとても美しく鳴いて、ぼくは、ぼくの意味を思うのです。

梅雨の谷間なのか、あまり雨が降らない。そう思っていると、豪雨のニュースがあった。人々の暮らしは気になるが、今でも降ってくれる雨にほっとする。花も、紫陽花も、そうだろう。

あの頃の、夏になりきる前の、風がまだ優しかった頃の、思い出がある。何にもできなかった思い出。ゆっくりと、夏に触れてゆこうとしていた。君と会うことはもうない、もうないのに、思い出だけは、この夏にもまた、向かうらしい。

心のことを、あれこれ毎日考える。何故、何故、何故、それが、どの思いにもついてくる。わかりようもないこと、それも、なんとなく、感じている。今日は鍾乳石のことと並べたけれど、ほんとは、自慢の娘のことを考えるとき、心は何よりも貴重なものに、思えている。

眠気覚ましにテラスにいた。海風が湿っぽくて、余計にけだるかった。ふと、大昔のことを考えていた。なんの脈略もない思考。見上げるまでもなく、あまりにも青い空が、絡まった。

人は仕事の頭を、切り替えているのだろうか。それとも、そのままであらゆることに対応するのだろうか。頭の使い方がわからない。ゆえに、帰ることも、ひと仕事だ。

こんな二人がいるかどうかはわからないけれど、蛍袋の絵を描いてくれる人はいないだろうか。昔、あの人が残してくれた絵を、無くしてしまった。あの絵に、もう一度、逢いたい。

人の心の常、誰もが等しく抱えている常、金持ちも、貧乏人も、大統領も、浮浪者も、多かれ少なかれ、抱えている常に、道を携えること、それが、まともな地球になるための、ただ一つのこと。

うつむきがちな花がちょうど良くなった。梅雨時の花の魅力は、強いけど、お淑やか。好みのことを聞かれたら、強いけど、お淑やか、と言いそうになる。

どんなときでも、山はそこにある。梅雨の霧の、雨の中でも、見えなくっても、山はずっと、ある。人は、ぼくは、ありはしないことを、ずっと感じている。思いしか、掴まるところはない。

夢の雨のあと書いた。わかる人にはわかる心の雨。わからない人にはわからない心の雨。死んでもいい、そう思える瞬間が、良いことにしろ悪いことにしろ、あればあったでよかったんだ、そう思った。

好き、という言葉を見ていると、どこか懐かしい。今でも、そばにある言葉なのに、何故か遠い気がして。誰かを好きでいることは、諸刃の剣かもしれない。生きられるのと、埋もれるのと。

こうして、何かしら書いているのは、夢のことのような、あの日の雨のような、柔らかな頃に、もう一度出逢いたいからです。きっと。

紫陽花を眺めていて、ぼんやりと、気の赴くままに書いた。もっと、上手く書きたいけれど、ぼくは、こうでしかなく、もっと、素直に書きたいけれど、ぼくは、こうでしかなく。

梅雨時の夕方、明日のことを考えた。毎日、毎日、なんとなく明日を迎えるけれど。明日、ぼくは、楽しい。

紫陽花の頃が過ぎ、心寂しい季節が来る、けれど、私は一人きり。紫陽花の額の、話とともに、この頃はまた、頭の中にずっとある。ほんとうの花、ほんとうの幸せ、ほんとうの日々。