燿(ひかる)は奈良市で民生委員を務める祖母に頼み事をされる。
というのも、三峰山の尾根のポツンと一軒家に住む独居老人、小坂の安否確認をしに行ってくれというのだ。
一路、ジムニーを走らせる燿。
雪山をなんとか無事、山小屋にたどり着き、小坂の無事を確かめたのだが、到底引き返せないほどの吹雪に見舞われる。
小坂の勧めもあって、その晩は山小屋で泊ることに。
ぼたん鍋を食べ、熱燗を交わしながら、しだいに燿は小坂と打ち解けていく。
ところがである。
夜も深まったころ、玄関の戸を叩き、
声をかけてくる謎の人物がいた。
小坂は息を殺し、だんまりを決め込んだので、燿もそれに従うのだった……。
※本作はしいな ここみさま主催「冬のホラー企画2」参加作品です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-30 17:07:21
10000文字
会話率:25%
IN:0pt OUT:29pt
おれは飛び込み営業をしている。
高級ガレージを売り込もうと、毎日営業車を走らせていた。
あいにく本年度に入ってから成果に結び付かず、毎度のごとく課長に叱責され、数字を上げることに妄執に憑りつかれていた。
数字数字数字――。
おれはいつしか、町を行き交う車のナンバーすら、眼で追うようになっていた。
いつのころからか、町じゅう希望ナンバーをつけた車であふれていた。
そんなとき、おれ以外のノルマを達成している他の営業マンたちさえも、営業車に希望ナンバーを掲げていることに気づく。
希望ナンバーをつけることで縁起を担ぎ、人生が好転するとでもいうのか?
営業所内に盗聴器をつけたおれは、ついに彼らの秘密を暴くことに成功する。
それは謎の秘密結社の正体だった……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-25 03:00:00
9937文字
会話率:8%
IN:0pt OUT:22pt
夫の浮気相手がもし、若いころの私自身だったら――?
私は60歳、夫である徳栄は67の無味乾燥な生活を送っている夫婦でした。
最近夫の様子が怪しい。どうも彼は浮気しているようなのです。
問いつめたところ吐きました。――案の定、女がいたのです。
ですが、浮気相手は、なんと若き日の私だったではありませんか!
夫が好きになった23歳の娘は、単なるそっくりさんではありません。
天真爛漫な性格といい、なにげない仕草や青春時代の記憶、背中の特徴的なホクロでさえ――ほんとうに在りし日の
私だったのです。
奇しくも名前まで、旧姓である萩本 円佳と名乗るのです。
相手がいちばんきれいだった私だからこそ許し、3人の奇妙な共同生活をはじめたのですが……。
定点観測のような眼差しで、夫と若い私が愛し合う姿を眺めてはうっとりし、自身を慰めてきたのです。
けれど、徐々に円佳は小悪魔の地金をさらすようになります。徳栄ですらそれに増長し、やがて私は行き場を失っていくのでした……。
円佳こそ、私の足もとを揺るがすシロアリ娘です。
さんざん虐げられ、追放されて我慢の臨界点に達したとき、『鉄の女』の異名を持つ私は反撃に出るのでした。
鉄にふさわしいやり方で――。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-03-07 03:44:08
30229文字
会話率:12%
IN:0pt OUT:25pt