ロマンス小説専門の出版社「Queendom」は、別名ロマンス工場とも呼ばれている。
工場が工業製品を出荷するように、次々と新しいロマンス小説を市場に投入するからだ。
「Queendom」は、ロマンス小説市場のシェア85%を独占する、業界のガリバーでもある。
この出版社には毎月1000近くの作品が応募されるが、出版まで漕ぎ着けることはせいぜい10冊程度だ。
だが、ここから自作品が出版されることを夢見るアマチュア小説家は多い。
脱工業化の時代に乗り遅れ、工場跡の廃墟が広がる、通称
「ラストベルト」に住むメアリーもその一人だった。
衰退地域で生活に苦闘するメアリーは、果たしてロマンス小説家になれるのか?
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-10-19 07:00:00
33380文字
会話率:36%
IN:0pt OUT:51pt
抱かなくてよかった
そう思った。
「意見が合わないから、わかれませんか?」
そんなメールが来て、一日だけのお付き合いが終わる。
なんにも感じない。少しの喪失感もない。
ここ数ヶ月、メールや電話でお互いを理解しあっていったような気がしてた。
もう十分に解り合えた、そうお互い思えたから会おうということになった。
もっと傷ついたほうが自然なのかな、とも思う。
でも、なんにも感じなかった。
作業着に着替えて、仕事に向かう。
僕は、とある工場の作業員。
構内に数十本ある生産工程の
ひとつを任されている。
指定の駐車場から自分の工程場まで歩く。「連続無事故749日」と書かれた看板が見え、トラックが横来する間を抜けていく。
途中何人かの顔見知りと挨拶や軽い会話を交わす。そのうちの何人かは南米から来た出稼ぎの期間工達だ。
折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2012-09-06 10:29:23
3768文字
会話率:1%
IN:0pt OUT:80pt